福間健二 追悼特集
詩を生き、映画を生きた福間健二監督の遺作『きのう生まれたわけじゃない」特別上映
福間健二
(1949-2023)
人間は生まれ
成長し
経験をつみ
よく晴れたある日
生きることが急にむなしくなるというのは
つまらない歌だ。
ぼくは信じない。
福間健二「きのう生まれたわけじゃない」より
(詩集『秋の理由』所収)
現実の中で生きる感触を大切にしながら、詩と映画で常に冒険的な表現に挑み続けた映画監督、福間健二。
彼の第7作目となる『きのう生まれたわけじゃない』は、当初、老人と子どもの出会いを描く物語として2015年に構想され、コロナ禍を経て、弱い立場にある老人と子どもたちが中心の作品として完成した。
撮影は2022年11月から12月にかけて、国立市、多摩、三浦半島の海辺で行われた。少女・七海を演じたのは今回が映画初出演となるくるみ。元船乗りの老人役にはこれまでも数々の映画で俳優として出演してきた福間監督自身が演じている。
2023年3月、この作品完成からわずか3日後、福間監督は脳梗塞で倒れ、4月26日に74歳で逝去。『きのう生まれたわけじゃない』は「人は人に出会い、なにかを受け取り、与えあうことで、小さな希望をつかむことはできる」という彼の信念が込められた遺作である。
監督プロフィール
1949年、新潟県生まれ。詩人、映画監督、批評家、翻訳家として幅広く活躍。中学時代から映画に没頭し、特にゴダールや増村保造、若松孝二などの作品に影響を受ける。高校時代に若松孝二、大和屋竺、足立正生らと出会い、1969年には若松監督の『ある通り魔の告白』で脚本・主演を務める。東京都立大学での教鞭をとる傍ら、詩作を続け、1989年には詩と映画をテーマにした雑誌「ジライヤ」を創刊。その詩は高い評価を受け、映画批評や翻訳でも活躍する。
1995年に長編劇映画『急にたどりついてしまう』を発表。以降も詩と映画の両分野で活動し、『岡山の娘』や『わたしたちの夏』、『秋の理由』などを発表。若い世代の映画作家からも熱い支持を受け、映画界での存在感を確立した。詩集『青い家』では萩原朔太郎賞と藤村記念歴程賞を同時受賞するなど、詩人としても高い評価を得た。
2023年4月26日、肺炎のため74歳で逝去。
シカゴ日本映画コレクティブ主宰より
今年、福間健二監督のご逝去に伴い、福間監督の作品をアメリカで上映することに特別な意義があると感じています。福間監督は、映画という表現方法にとどまらず、詩人、批評家、翻訳家としても多岐にわたる才能を発揮された稀有な人物でした。その表現の幅広さと深さは、どの分野においても彼の独自の視点と豊かな感性が光り、多くの人々に影響を与えてきました。
福間監督の作品は、単なる映像作品の枠を超え、人と人とのつながりや社会への洞察を示すものです。福間監督の類まれなる才能を讃え、監督が私たちに残したくださった貴重な遺作に触れる機会をアメリカの観客の皆さんに提供できることを誇りに思います。
福間健二監督フィルモグラフィー
1969年 | : | 『ある通り魔の告白 現代性犯罪暗黒篇』– 脚本・主演(若松孝二監督) |
1969年 | : | 『青春伝説序論』 – 脚本・監督(高間賢治撮影、16ミリ映画) |
1995年 | : | 『急にたどりついてしまう』 – 脚本・監督(長編劇映画第1作) |
2008年 | : | 『岡山の娘』 – 脚本・監督 |
2011年 | : | 『わたしたちの夏』 – 脚本・監督 |
2013年 | : | 『あるいは佐々木ユキ』 – 脚本・監督 |
2016年 | : | 『秋の理由』 – 脚本・監督 |
2020年 | : | 『パラダイス・ロスト』 – 脚本・監督 |
https://kino.brighthorse-film.com/NBYfukuma/ |
『急にたどりついてしまう』
『わたしたちの夏』
『パラダイス・ロスト』